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美意識を鍛えて犯罪とシステムの妄信を防ぐ

  • 2019-07-20
  • 2019-07-20
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「美意識」と聞いて、あなたは何を想像するだろうか?

人の外見の美しさ、美術品や装飾品に対して抱く評価、歴史的建造物や自然の奇跡的な調和など、人によって「美しい」と感じる対象も感覚も異なるものだと思う。

私は自然の一部である「人体」に美しさを感じることが多い。

人だけに限ったことではないが、永い時の試練を乗り越えて進化してきた生物の肉体は、究極の機能美だ。

アスリートが鍛え上げた肉体は例外なく美しい。自らの人生を掛けて磨き上げ、取り組む競技に特化したその肉体には、常人の想像を超える努力が結実している。

その競技が陸上競技でも、サッカーでも、器械体操でも、プロレスでも、最適解を追求した結果生み出された肉体は、無駄がなく研ぎ澄まされている。

今回取り上げるのは、コンサルタントである山口周さんの著書『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社、2017年)である。

本書では、ビジネスにおける美意識の重要性、特にそれが意思決定においていかに重要か、が詳細に述べられている。

上で述べた生物の機能美に対する憧憬は私の主観に基づくものだが、このような感情を抱くことが果たしてビジネスに影響を与えるのか?どのように良い効果をもたらすことができるのか、さらに美意識を欠いた人・組織には何が起こるのか?本書で確認しよう。

● ビジネス上で意思決定に携わる人
● フリーランスなど自分で判断する必要がある人
● 変化の激しい世界での拠り所を知りたい人

WHAT?:美意識とは何か?

美意識とは「真・善・美」に基づく判断を指す。では真善美とは何か?

しん‐ぜん‐び【真善美】
認識上の真と、倫理上の善と、審美上の美。人間の理想としての普遍妥当な価値をいう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

辞書を参照すると、真善美に基づく判断とは「人間の理想的な価値観に基づいてものごとを判断すること」を指している。

この理想の中に、認識、倫理、審美が含まれている。この三要素を見ると、審美のみが美意識に直結しそうな印象を受けるだろうがそうではない。「真実」や「倫理」も美意識に含まれる。

一方、現代の世の中はVUCAと呼ばれる不安定なジビネス状況にあると言われる。

Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字。予測困難で不確実性・不透明性が高い状況を表す軍事用語

VUCAの世界では、ルール整備が現実のシステム変更に追い付かないため、真善美に適っているかどうかで判断を下す必要がある。したがって、美意識が必要になるというわけだ。

これはどういったことかと言うと、例えばAirbnbに代表される民泊サービスは、日本においてサービスが実施されるようになったあとで法整備(住宅宿泊事業法)が進んだ。

VUCAな状況では環境、ビジネスにおける市場・競合などが予測できない上に頻繁かつ高速に変化してしまう。

そのような状況で価値を提供できる事業をおこそうとすれば、ルールのない領域でビジネスを始める状況に直面することになる。

ではこのとき、その事業を始める人とっての拠り所は何か?

その拠り所となるものこそが「美意識」だ。

他人が決めたルールが存在しないのだから、自分でルールをつくらなければならない。

自分でルールをつくる場合、「すでに存在するルール(=法律)を破らなければ問題ない」と考えることもできる。場合によっては、グレーゾーンでビジネスをするという判断になることもある。

このような状況において「この判断は正しいものか?」と自問自答するときに必要なモノこそが、美意識だ。

「法律に触れてないからOK」とするのか、あるいは「法的にOKでも倫理的にはNG」とするのか。この判断は美意識によって下される。

WHY?:なぜ美意識を鍛えるのか?

本書で説明されている「美意識を鍛える理由」を一言で言うと「犯罪とシステムの妄信を防ぐため」だ。

より具体的に言うと、法律ではなく、より普遍的なルールで自らの能力を制御することで、犯罪を犯さないためである。

「経営とはアート(=直感・構想力)とサイエンス(=理性・分析力)とクラフト(=経験・職人的)が混ざりあったもの」というヘンリー・ミンツバーグの言葉が出てくる。

このアート、サイエンス、クラフトの三要素はどれか1つだけ突出していても上手くいかない。

例を挙げると、オウム真理教は学歴エリートが多く入信していたことで有名だが、美意識が欠如し、かつ極端に階層化の進んだサイエンス側に振り切った組織だった。

システムを美意識に照らして批判的に見ることができ、そのシステム自体を修正できるのは、システムに適応しているエリートだけである。

自らの所属している組織のルールに盲目的に従うのはエリートのあるべき姿ではない。三菱自動車のリコール隠しのように、最終的には組織の破滅を招きかねないのだ。

HOW?:どのように美意識を鍛えるか?

本書で挙げられている美意識を鍛える具体的な方法は、能動的な絵画鑑賞や哲学の学習などいくつかあるが、私が興味をもったものは以下の2つだ。

  1. マインドフルネス

美意識を鍛える方法①:マインドフルネス

一般的に「意思決定には感情を挟むべきではない」といわれる。冷静な判断を妨げるためだ。

失敗してイライラしたときや落ち込んでいるとき、反対に良いことがあって高揚感に包まれたような状態でネットショッピングをしてはいけない。散財しかねないからだ。

その一方で、「情報に接したときの感情反応は実は意思決定の効率を上げる」というアントニオ・ダマシオが提唱する「ソマティック・マーカー仮説」という説もある。

この仮説では、意思決定に感情を取り入れるべきとしている。

そして、マインドフルネスはソマティック・マーカーを感じ取る技術の方法論であり、セルフアウェアネエス(=自己認識)の能力を高めることができるとされる。

つまり、マインドフルネスを実践することで自分の感情をより精度良く認識することができるようになる。

これにより自らの美意識に対しても敏感になるため、意思決定の精度を上げることができるというわけだ。

美意識を鍛える方法②:詩

一方の詩は、メタファーを学ぶために行う。

リーダーシップと「詩」には非常に強力な結節点がある。それは何かというと、両者ともに「レトリック(修辞)が命である」という点です。

位置No.2543

組織を率いるリーダーは、自らのフォロワーを「酔わせ、舞い上がらせる」ことが必要になる。

理屈だけでは人は動かない。理性と感情が両方とも満たされた状態になって初めて、人は動くのである。

詩を読むとメタファーの引き出すを増やすことができる。

さらに、詩を学ぶことは知的生産を効率化することにつながると言われている。

情報処理のプロセス(入力⇒処理⇒出力)の過程で、メタファーを有効活用すれば最低限の情報で効率的なコミュニケーションが可能になるためだ。


アーティストやクリエイターといった人たちは、何らかの作品を生み出すために「自分が何を美しいと感じるか」を意識しながら生活している。

私はデザイナーとして修業中であるから、自分がカッコいいと思った広告やロゴなどを見かけたとき、「何が美しいと感じさせる要素なのか」と向き合う時間を意識的に持つようになった。

きっとこのような習慣は、普通のビジネスパーソンにも必要なのだろう。

自分の中にブレない軸をもち、ルールだけに縛られずにビジネスや自分の人生を切り開くことは、現代を生きる人が向き合わなければいけない現実だ。

そのための取っ掛かりとして、美意識について意識してみよう。

自分が美しいと感じる言葉、風景、他人の言動などは、自分の人生に指針を与えてくれる。そのことに自覚的であれば、VUCAな環境も乗り越えていけるはずだ。

キャンバスに絵を描く女性
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