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好きの実現で個人内多様性を高め、成長と挑戦へ

  • 2019-05-06
  • 2019-06-28
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副業ではない「複業」に取り組むには

私は現在、京都に本社を構える企業で働いている。比較的大きな企業にも関わらず、副業が全面的に認められている。人事の人間に話を聞くと、もともと「従業員に兼業農家の人が多かったため、副業を認めざるを得なかった」という経緯があるようだ。昨今の「副業解禁」の流れとは、全く無関係だ。

一方、私の職場では2年ほど前から「働き方改革」という名の残業規制が実施されている。その結果、残業規制前の年には毎月平均30時間ほどあった残業時間が、この1年くらいは毎月平均7時間にまで減少した。したがって、会社にいる時間は大幅に減り、余暇の時間が増えた。当然のことながら、手取りの給料は減ったため、私は自然と副業に関心が向くようになった。

山田 英夫氏の著書マルチプル・ワーカー 「複業」の時代(三笠書房、20118年)では、アルバイトなどに代表される単純な副業とは異なる「複業」を定義し、その意義と実現のための方法について詳細に述べられている。

ただ単に副収入を得る「副業」では得られない「複業」の価値とは何か?以下に本書から得られた気付きをまとめたい。

WHY?:なぜ複業をするのか?

サイバネティックス(cybernetics)という学問分野がある。アメリカの数学者であるノーバート・ウィーナーによって提唱された学問分野であり、生物および機械における制御・通信・情報処理などについて扱う。

このサイバネティックスの研究者であるウィリアム・ロス・アシュビーが提唱した概念に「必要多様性の法則(The Law of Requisite Variety)」があり、簡単に言うと「複雑な環境変化に対応するためには、その環境と同じだけ複雑なシステムが必要である」ということです。

近年、日本企業ではダイバーシティを重視した採用活動や、女性の力の活用に関する取り組みを行っていることが多いが、これも上記の複雑なシステムを組織内に備えようという目的がある。

複業が重要なのは、個人の多様性を高めることができる点にある。企業としては異質な人材をたくさん集めて多様性を高めようとするが、「異質な人材を集める」のはいわゆる伝統的な日本企業ではなかなか難しい。

そこで、個人の多様性を高めることができれば、組織としての多様性が自然と高まる。複業は複雑に変化する現代社会に対応するためのひとつの解なのである。

そしてこのことは、組織だけではなく複業をする個人にとってもメリットがある。複業によって多様性を増した個人は、会社に左右されないキャリアの選択肢が得られる。

「会社から指示される業務を続けるだけでは成長できない」「社内で別の業務に挑戦したいが機会がない」と感じれば、複業する、あるいは複業の経験を踏まえて転職または起業するなど、まったく別のキャリアを選択することも可能になる。

富士通が「45歳以上のグループ社員を対象として早期退職を含むジョブ選択を求める」というニュースがあったが、同じ時期にNEC、コカ・コーラ、エーザイ、日本ハムなどの一部上場企業が同様に早期退職者を募っている。

この流れは今後も変わらず、むしろ他の企業にも波及していくことになるだろう。もし自分の勤める企業でもこのような動きがあったとき、複業をしているかどうかで対応が変わる。複業による個人内多様性を身に着けていれば社内のジョブ選択にも対応できる可能性があるし、早期退職して次の職を得るにしても複業の経験が活かせるだろう。

WHAT?:複業のメリットは何か?

複業を実行している人は会社(本業)でリスクを負った挑戦が可能になる。複業で本業とは異なる収入減が確保できている場合、本業での評価を気にする必要がなくなるということである。

また、複業では自分自身が最高の意思決定者になる。ここでヒト・モノ・カネの意思決定を繰り返すことで、経営のスキルを磨くことができる。

意思決定の能力を伸ばすには、実際に意思決定を繰り返すしかない。しかしながら、会社員が日常業務で自分に責任が伴う意思決定を繰り返すことは管理職でもない限り難しい。よって、複業の場で意思決定を行う経験を得るのだ。

さらに、複業を行うと、本業ではありえないような異質な人材との出会いがある。収入を伴う複業でなくても、ボランティアやプロボノなどの活動では自分の興味のある分野で活動している人に会うことができる。

付き合う人が変わると新たな発想を得ることができる。この経験は本業にもプラスの効果があるはずだ。私が勤務しているような伝統的日本企業では、社員が均質化している傾向が強い。よって、異質な人材の考え方に触れられる機会は貴重であり、この結果、個人内多様性を高めることにもつながる。

HOW?:どうやって複業するのか?

複業をする人は心理的な成熟度を高めた状態、すなわち自律した状態であることが必要だ。心理的な成熟度が低い状態で複業に取り組むと、複業に必要以上のエネルギーを注ぎ込み、本業がダメになる恐れがある。

また、複業をする場合は「will」と「can」と「environment」を揃える必要がある。多くの人にとって複業に取り組むきっかけは、収入を得る事よりも「好きなことで自己実現」することであるべきだ。自分にとっての「will」:意思や意欲をもって取り組めることで、「can」:自分に実行可能なことを、「environment」:実行可能な環境を整えないと複業は実行できない。

一方、複業を実施する場合には、現実に追い付いていない法律や制度、例えば労基法や雇用保険の問題には気をつける必要がある。この辺りは本業の社内規定の制度内において、自分で責任のとれる範囲で意思決定を行うことになる。

個人的には最も身近な複業は家事・育児だ。家事や育児を行うことで収入が得られるわけではないから副業にはなり得ないが、家事や育児に対して真剣に取り組むと意思決定の連続であることに気づく。

日々の家事をこなす上でヒト・モノ・カネをどう配分するか、食事に関することだけでも、外食をするのか、自炊をするのか、自炊の場合に買い物はネットスーパーがいいのか、業務スーパーに買い出しに行くのか。さらに子供がいる場合には外食するとして子供が食べられる食事があるのか、離乳食を用意した方がいいのか、そもそも離乳食を持ち込み可能な店なのか、など無数の選択肢に対して取捨選択を行うことになる。

私自身、3人の子供を育てている身であり、父親歴は7年を超えている。7年のキャリアと言うと社会人としてはとっくに一人前だろうが、いまだに子育てにおける日々の小さな選択を間違えることはある。今後も間違えてしまうこともあるだろう。

このブログはまだコンテンツが少ないが、今後、私が家事・育児と並行して本業以外の複業に取り組む様子を記録していきたいと思う。同じような境遇にある方の参考になれば幸いだ。

 

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