「時間が足りない」は誰にとっても頭を悩ませる問題だ。
ワーキングマザー/ファザーは時間に大きな制約がある。
仕事と家事・育児を両立しようと考えると、限られた時間でどうやって効率よくタスクを完了させるか、すなわちより少ないインプットでどうやって成果を出すかを考えなければならない。
加えて複業やスキルアップにも取り組もうと思ったら、今まで通りの仕事のやり方では睡眠時間を削るくらいしか方法がなくなってしまう。
「日本のオフィスワーカーの生産性は諸外国に比べて低い」というデータがある。
時間がいくらでもかけられるなら、生産性を高めてより短い時間で仕事を終わらせようとは考えない。
「残業して仕事を片付ければよい」と考えていれば、仕事時間は確実に残業時間にまで延びる。パーキンソンの法則として有名だが「仕事は締め切りまで膨張し続ける」ものだからだ。
ケビン・クルーズ氏の著書『1440分の使い方 ──成功者たちの時間管理15の秘訣』(パンローリング株式会社、2017年)では、著者がビリオネアやオリンピック選手など大成功を収めた人々にインタビューを行った結果から得られた、時間管理の方法や心掛けが述べられている。
著者は、その神髄を「E-3C」というキーワードにまとめた。
これを意識することにより、あなたも明日から生産性の高い働き方を実現することができるだろう。
● 仕事がたくさんあって、どれから手を付ければよいかわからない
● 気持ちよく朝のスタートを切りたい
WHAT?:「E-3C」とは何か?
著者は生産性とはエネルギーと集中力の問題であるとし、そのポテンシャルを最大限発揮するためには「E-3C」を意識することが重要だと述べる。
「E-3C」を構成する要素は以下のようなものだ。
- E:Energy(エネルギー)
- 3C:Caprure(記録)、Calender(スケジュール表)、Concentrate(集中)
WHY?:なぜ「E-3C」が重要か?
「E-3C」の各要素が生産性にどのように関係があるか確認しよう。
「エネルギー」がないと「集中」できない
生産性を上げるためにまず、必要なことは自分の最優先業務に「集中」することだ。
その「集中」を最大限引き出すため、大成功した人々は睡眠、栄養、運動、朝の習慣、休息を工夫することにより、肉体的・精神的なエネルギーの枯渇を阻止している。
エネルギーが枯渇した状況では、重要な仕事に取り組んで成果を上げることは難しい。
優先順位の高い重要な仕事はたいていの場合、複雑で、いくつかの段取りを必要とし、複数の関係者とコミュニケーションを取りながら進めなければならないものが多い。
エネルギーが十分でない場合、仕事を進めるステップを把握するだけで息切れしてしまうだろう。
また、大成功した人々は、複数のタスクを同時並行で進めるようなことはしない。
マルチタスクができるというのは幻想であり、実際にはAという作業とBという作業を高速で切り替えているだけだ。集中力を無駄遣いしている。
さらに、30分や1時間おきに5~10分程度の短い休憩を挟んでリフレッシュすることにより、一日中、高い集中力を維持できる。
「スケジュール表」で重要な仕事を最優先に
著者は「ToDoリストは使うな!」と繰り返し述べる。
やるべきことがある場合、ToDoリストではなくスケジュール表に記入するべきだという。
ToDoリストだけだと、いつになったらそのToDoが実行されるかがわからず、そのリストの項目を実行するために必要な工数がわからないからだ。
あなたの目の前に、優先順位と難易度の異なる複数の仕事があるとしよう。
「すべての仕事を終わらせなければ」と意気込んだ結果、比較的難易度が低く処理しやすい案件から取り組んでしまうことがある。
難易度の高い案件から取り組んだ場合に、仕事時間が足りなくなる結末を予想した上での行動だ。
また、精神的な負担を考慮して「最初に取り掛かるのは、軽めの作業的な仕事から・・・」となる場合も多い。
気持ちはわかるが、これでは「難易度・重要度の低い仕事だけで仕事時間を使い切ってしまう」という最悪のケースも起こりうる。
そこで、スケジュール表を作って重要な仕事をする時間を予め決めてしまうのだ。
それも、できれば朝一番にとりかかるように予定を組むべきだ。
他の仕事をしてエネルギーを消費する前に、最重要な仕事にエネルギーをつぎ込むためだ。
「記録」で雑念を消し去る
そして最後に「記録」で頭の中から集中を乱すものを取り除く。
大成功した人々は常にノートを携帯し、なんでもメモしている。
仕事に集中しているときに限って、今考えなくてもいい雑念が頭をよぎることがある。
「明日の朝、コンビニで箱ティッシュを買っておこう」
「今週、サッカーの日本代表戦があったはずだから、録画予約しとかないと」
上のような雑念が浮かんだら、その場でメモ(私の場合はEvernote)に記録し、リマインダーをセットしておく。
メモを作成しておけば「覚えておかないといけない」というプレッシャーから解放されるため、目の前の仕事に集中することができる。
これで雑念の内容を完全に忘れた状態で、再度集中状態を取り戻すことができる。
HOW?:どのようにE-3Cを実現するか?
一波超えたら一回休む
休息を戦略的に挟むことで、長い時間、集中力を保って仕事をすることができる。
作業と休息を繰り返す有名な手法に「ポモドーロ・テクニック」がある。
これは、25分の作業と5分の休憩を「1ポモドーロ」という単位で呼び、「4ポモドーロ」ごとに長めの休憩(15分)をとるというものだ。
シンプルにストップウォッチを使ってもいいし、デスクトップアプリやchromeアプリでも利用できるものがある。
試しにやってみるとわかるが、25分で作業時間を区切ると、残り時間が減っていくにつれてだんだん焦りが出てくる。
5分の休憩中はなるべくPCから離れて頭をリフレッシュすることが推奨されているが、私はSNSを見ることもある。
重要なことは「5分で休憩から戻ってくる」ことだが、集中力が高いレベルで保てるのであれば25分+5分のサイクルにこだわる必要はない。
仮に20分+10分のサイクルであっても1日中主注力が保てるのであれば休憩時間が長くても問題ではない。
80対20の法則にしたがう
「成果の80%は、全体の行動のたった20%から生まれる」という「パレートの法則」を聞いたことがある人も多いだろう。
この法則を自分の仕事に当てはめると、最重要な20%の仕事を実行すれば80%の成果が得られることになる。
具体的には、最も重要な仕事を見つけ出し、そこには集中力を注ぎ込む。一方、それ以外の仕事はそこそこで妥協する。
私の身近な例を挙げるとブログがある。
例えば、全PVの80%は20%の記事が得ている可能性がある。
よって、その20%の記事をリライトしたり派生記事を作成することが全体のPVを大きくするために効果があるだろう。
そして、それ以外の記事はできるだけ手を掛けないようにする。大きな成果にはつながらないからだ。
自分の能力を発揮できる「朝の習慣」を身につける
著者が調査した結果、大成功人たちには共通する朝の習慣が見つかったという。
- 早起き(6時以前に起きる)
- 水をたくさん飲む
- 健康的な朝食(フルーツ、スムージー、プロテイン、低GI食品)
- 運動
- 瞑想
- 読書や日記
中でも運動はエンドルフィンを分泌させて幸福感を高める効果がある。朝に運動をすれば、前向きな気持ちで一日を始めることができるのだ。
WORK FAST, LIVE SLOW.仕事を充実させ、生活を楽しむ。ビジネスはスマートに、暮らしは豊かに。ポジティブ…
複業のために朝活を実践している人も多いだろうが、朝の作業を始める前に5分だけでも上のリストにある項目を実行してみると、朝の作業に対する集中力が高まる。
私の場合は起きてすぐに口をゆすいで水を1杯、ゆっくりと飲む。
その後簡単なストレッチをしてから、ブログの執筆やオンラインサロンの課題に取り組んでいる。
水とストレッチだけでも自分の頭がクリアになり、より冴えた状態で作業に取り組めていると感じる(プラシーボ効果もあるかもしれないが、実際に集中できているので全く構わない)。
朝起きてから決まったルーティンを実行することそのものにも、瞑想の効果があるのではないかと感じる。
朝が苦手でない方は、早起きとともに朝のルーティンを生活に取り入れてみてほしい。
今までよりも生産性が向上すると実感できるはずだ。
本書では「E-3C」を意識することで、人生からムダを無くして生産性を最大限まで高める手法を提案している。
実際に成果を上げている成功者(ビリオネア、オリンピック選手、オールA学生、起業家)の習慣を垣間見れるだけでも興味深い。
なお、付録として時間管理に関する名言が110個も収められており、こちらもなかなか興味深いフレーズが詰まっている。
個人的に気に入った一文は次の言葉だ。
「もともとやらなくてもよいものを効率よく行うことほど無駄なことはない」ーーピーター・ドラッガー
ムダをなくそう。