毎日会社に通い、子供もいる会社員にとって最大の悩みの一つは「時間がない」ことだろう。
「複業に挑戦してみたい」「いろいろなスキルをのばしたい」という前向きな心があっても、それを実行する時間をつくるのは簡単ではない。
私自身、仕事と家事と育児に追われる日々だ。「自由に使える時間がもっとあれば、新しい知識やスキルを身につけられるのに…」といつも考えている。
臼井由紀さんの著書『やりたいことを全部やる!時間術』(日本経済新聞出版社、2018年)では、著者が実践する時間術が余すところなく公開されている。
やりたいことが全部やれる「時間リッチ」な人にどうすればなれるのか?
実はそのために必要な心掛けはシンプルで、さらに人間関係もうまくいくようになるという。
WHY?:なぜ時間術が必要か?
時間(=命)には期限があるから
ふだんから「時間には限りがある」ことを意識して過ごしている人はどれくらいいるだろうか。
毎日、仕事や家事・育児などやらないといけないことが沢山ある立場だと、時間に追われるばかりで、なかなか「やりたいこと」に手を出せない。
私も以前は夜の9時、10時まで仕事をしていて帰宅するのは夜11時、そこから晩ご飯を食べたらシャワーを浴びて寝るだけ、という生活をしていたことがある。
自分がやりたいことは土日など休日にやるしかないが、休日は家事・育児をこなし、なかなか自由な時間を作れなかった。
このように忙しい生活をしていると「新しいことに挑戦したい」という気持ちは出てこないものだ。
「終身雇用はもはや維持できない」と大企業のトップが明言する時代にあっても、なかなか次の一歩のための取り組みに手を出せず、思考停止状態に見える人が多いのもおそらく、これが理由ではないだろうか。
私の場合は職場の働き方改革の結果、残業が大幅に減り、半強制的に家にいる時間が増えた。
その結果、「自分の時間(=命)をより有効に使うには、いま、何をすればいいだろう?」と考える余裕が生まれた。
人生が楽しくなりイイ男・女になれるから
やりたいことが全部できる人生は、楽しい人生に決まっている。
仕事もプライベートも充実していれば、自然と自身に満ち溢れた態度・表情となり、楽しく生きていることが周囲にも伝わるだろう。そのような人が身近にいればとても魅力的に見えるはずだ。
他人から魅力的だと思ってもらえる人生を送ることは、自分がやりたいことを実現する後押ししてくれる可能性がある。
なぜなら、あなたの人生におけるチャンスはすべて人が運んできてくれるからだ。
WHAT?:時間術で大切なことは何か?
人づきあいを粗末に考えない
チャンスだけではなく、お金や時間までも運んできてくれるが人だ。よって、人づきあいを粗末に考えてはいけない。
メールやSNSを使えば気軽に連絡を取ることは簡単だ。しかし、そのメールを受け取り、SNSの投稿を見る人が端末の向こうにいる。
自分がメッセージを送る相手は生身の人間なのだから、その人と実際に会って対面しているときの感覚を忘れるべきではない。
著者の提案は、手書きの手紙やメール本文に記載するP.S.を利用して、あえてコミュニケーションに時間と手間をかけることだ。
他の人がやらないような「ひと手間」を掛けることにより、相手に強い印象を与えることができる。
一見、コミュニケーションに時間を掛けるのはもったいないと感じる。もちろん、無駄に丁寧にすればよいというものではないが、人付き合いに関しては「効率化すればそれでOK」ではない場面もある。
自分が相手から軽んじられていると感じた場合、「この人にチャンスをあげよう」などと思うことはないだろうからだ。
「時間の手綱」を手放さない
相手がある場合の時間管理は、相手の都合を考える必要があるため、自分一人の時間管理よりも大変だ。
ここでのポイントは自分が時間に厳しいことを相手にもわかってもらい、「時間のコントロール権」を相手にわたさないことだという。
たとえば、電話した相手が不在だった場合、折り返し電話をもらうのを待つのではなく、自分から再度掛けるなど自分がアクションを起こすきっかけになり、主体的に行動することで時間をコントロールしやすくなる。
自分で時間をコントロールできない場合、スケジュールは相手任せになってしまう場合がある。
Amazonなどの通販で荷物の受取時間を指定して買い物をすることも多いと思うが、これも自分で時間を指定してコントロールしているのだ。
いつ荷物が届くかわからない状態だと、その前後の予定が定まらず、時間のコントロール権を失った状態になってしまう。
HOW?:どうすれば「時間リッチ」になれる?
チャンスを逃さないために自分の背中を押す
もし目の前にチャンスが来たら「今、動かないとチャンスを逃してしまう」だけではなく「自分ならできる」と考えることだ。
チャンスはいつ転がってくるかわからない。さらに、転がってきたチャンスに飛びつくためには勇気が必要だ。
そのチャンスが「経験の浅い分野での仕事」など、やりたいが自信がないものであった場合、勇気をもってチャンスに飛びつかないと逃してしまう。
日頃からチャンスの到来に備えてスキルアップしたり学習を積み上げておくなど準備することは重要だが、いざとなってチャンスに飛びつけるかどうかは気持ちの問題だ。
どれだけ準備していても、未経験の領域ではその準備で十分かどうかは本人を含めて、誰にもわからない。
この場合にできることは「自分なら大丈夫だ」と自信をもって動くことだけである。
その結果、もし失敗しても構わない。
人はチャンスに飛びついて、何とかモノにしようと悪戦苦闘する過程で必ず成長する。
同じチャンスは2度と巡ってこないかもしれないが、挑戦して得られた成長は、そのときにしか得られなかったものだ。
成長を得るためにチャンスに挑戦することが重要なのである。
挑戦の結果、成功すればラッキーで、失敗しても得られるものがあるとすれば挑戦する以外の選択肢はないことがわかるだろう。
このように挑戦を繰り返せる人はそのうち成功するだろうから、どんどんやりたいことを実現できるようになる。
月~水で仕事を終わらせ、木でチェック、金で準備
著者が実践する具体的な時間術として、1週間を3つに分割する方法が挙げられている。
- 月曜日~水曜日:実際に仕事をして終わらせる日
- 木曜日:進捗状況や問題点をチェックする日
- 金曜日:来週の仕事の準備に充てる日
ある週に終わらせる必要のある仕事は、なるべく週の前半までに終わらせてしまう。
週の後半は、その週の前半で行った仕事のチェックと次に備えた準備に使うというものだ。
つまり、金曜日が締め切りの仕事でも水曜日までに前倒しで終わらせることになる。
勝間和代さんの著書にも出てきた「余裕(=スラック)」の概念と同じく、あえて自分で締め切りを速めに設定することで、想定外の事態に対応したり、新しいことを始めるための時間を確保することができる。
「超コントロール思考」で人生をコントロールする 私は日常的にfeedlyというRSSリーダーを使用して、気に入ったブログが更新されたらチェックしている。 そのなかでも、勝間和代さんのブログでは家事や仕事の効率化、健康に関する有益な考[…]
私の場合は会社員なので、木曜日・金曜日に会議や出張が設定されることもある。こういった場合はこの仕事術をそのまま実行するのは難しい。
ただ、1週間分の仕事を前半に圧縮して終わらせる努力をすること、今週のうちに来週の準備をしておくことは非常に有用だ。
来週必要となる資料を今週のうちに下書きやアウトラインだけでも作成しておけば、来週その仕事に着手するハードルが下がるだろう。
あるいは、何らかのトラブルが発生し、週の後半に想定していた作業時間が取れなくなっても、何とか乗り越えられるようになる。
日頃から週の後半をバッファと考えて行動することで、余裕をもって仕事に取り組むことができる。普段からこうやって行動する人は、新しいことをする時間が生まれるのだ。
AM2時に起きて朝のうちに仕事を終わらせる
筆者は世間がまだ眠っているAM2時から仕事を始める。そうすれば邪魔が入らずスムーズに仕事を処理できる。仮に前日に会食があっても、AM2時に起床するという。
私はまだこのレベルには達していないが、起床時間はだんだん前倒しにしてきた。
もともと夜型で、子供を寝かしつけたあとに自分の時間を作ろうとしていたが、子供を寝かしつけたあとに作業をしても効率が悪いことに気づいた。
もし子どもを21時に寝かしつける必要があるなら、そのときに自分も眠ってしまう。
その代わり翌朝は4時台に起床し、やりたいことをやればいい、と考えるようになった。
実際のところ、仕事がある平日に子どもと一緒に21時に眠りにつくことは難しい。私の場合は土日など仕事が休みの日は21時までに子どもを寝かしつけ、翌朝は4時半から5時の間に起きるようになった。
このブログ記事を書いているのも5時台だ。平日の朝でも、なんとかまとまった時間が取れるようになっている。
本書で紹介されている時間術はそこまで難しいものではない。真似しようと思えば今日からでも、すぐ真似できるものもある。
ただし、時間術はあくまで手段であって、時間をつくり出すこと自体が目的ではない。
時間リッチになったらやりたいことが全部できる、というのはウソではないだろう。
しかし、自分がもし時間リッチになったとき、何がしたいのか。
日頃から自分のやりたいことと向き合い、モチベーションを維持して時間術に取り組むことをおすすめする。